恒 心 篤 行

「恒心篤行」

心にあるものを、

心の求めるものを信じ、

固い意志で断行する、

そういう意味の漢文らしい。


だがインターネットで調べても、

そんな言葉は無いから、

中国のことわざというよりは、

中国の漢詩や古文の一部なのかもしれない。



この言葉が好きだ。

鉄の意志を持って物事に挑戦したいと思い続けてきたし、

可能な限りそういう人間でいたつもりだ。


そしてその姿勢は、この2008年も何ら変わることは無いはずだ。





風邪に倒れ、歩くのもままならないほどの熱を出した。

なんとか快方に向かった後、

予定通り学生時代の友人と過ごしたが、

直後にまた寝込んでしまった。


この正月は自分と向き合いたくて、

大晦日も元日も家にいると決めてはいたが、

まさかこんなにじっくり向き合えるとは、笑。




年を新たにして、仕事に対しても心境が変わったと書いたが、

それは実は絵に関わることだ。



大学を卒業して以来、

制作を忘れたり、それがどうでもいいと思えたことは無いが、

実際に制作やそのための環境づくりにかけられる時間は皆無だった。


性格的に何でも一生懸命やりたいタイプだし、

一生懸命やれば何だってそれなりに認めてもらえるもの。

いつしかサラリーマンとしてオートバイ屋で働くことが自然であり、

絵を描けないこと、それすら自然なことであった。


転職を考えたのも決めたのも、制作の為ではない。

自分の将来とか、給料とか休みとか、

様々な要因がそこにはあったが、

果たして絵のことをどれほど考えただろうか。

「企業戦士だ♪」などと冗談を言いながら、

いつしか組織の中で働く自分を当たり前に受け入れていたように思える。



寝込み、向き合ったこの貴重な数日間は、

まさしくこんな自分を激しく打ちのめすものであったし、

そのために風邪をひいたのだと僕は思っている。



企業の一員としてより重い地位を得ること、

人一倍金を稼ぐこと、

一員である以上僕に出来ることは何だってやるが、

これは僕の生涯をかけるものではないのだ、やはり。



ある絵のアイディアが浮かんでも、

僕はそれを誰にも話さない。

話すと自分の中で価値が下がるからだ。

本当にいいアイディアは、暖めて暖めて、

長く長く煮込んである日爆発させるものだ。


それと似ている感覚で、詳しいことはお話しできないが、

僕は今年必ず絵を描き、

そして描ける環境を整えようと思う。



アイディアを軽々しく口にはできないが、

そのアイディアは人に見せて初めて意味を成すものだ。

絵とは人に見てもらうためにあるのだ。

今年はそれを徹底的に追及したい。


仕事の手を抜くつもりはさらさら無いが、

絵は趣味ではないのだ。

自分を賭け、自分を試し、自分を高めるために必要なのだ。






「恒心篤行」

という言葉がある。

中国由来の漢文ということ以外に詳しい出所はわからない。



「恒行」

「侍らしい響きの名前に」

そう言って死んだ祖父がつけてくれた、

僕の名前だ。