ひと月の過ごしかた

独特の静寂が、今日はいつもより一層寂しさを感じさせる。

午後から降り始めた雨の中、

僕は新天地となる生命保険会社で打ち合わせをしていた。

会社を出る頃には、

雨はすっかり雪になっていた。

独特の静寂が、今日はいつもより一層寂しさを感じさせる。


2月。

新しいひと月がスタートした。

いよいよ新しい世界へ飛び込むということ。

間違いなく1月までの会社を辞めたということ。

新天地の営業所で、2月の過ごしかたを打ち合わせしたことで、

それは現実のものとして、

妙な冷たさを持って飲み込まれた気がする。





当たり前のように毎日顔を合わせてきた人たちと、

ある日突然顔を合わせなくなる。

それだけだって寂しいものだ。

大切にしていた人が、しかも大勢いたのだから、

気持ちが何となく落ち着かないのは、

仕方がないことなのかもしれない。






新しい職場は神田。

実は今までの職場のすぐ近くだ。

働く先は、東京駅直結の竣工2年という最新の高層ビルから、

小さな雑居ビルの1フロアに鞍替え。

あのとんでもない眺望を見られないのは心底残念に思うが、

居たら居たで眺めている余裕など無かったから、

まぁ結果的には同じか。






新しい職場の、新しい机。

入社は3月だが、職場にそれは既に用意されていて、

行動予定表には僕の名のマグネットがあった。



この机に、鉢植えは置けるか。達磨を置いても構わないか。

念のために聞いておいた。

OKの返答だったのは当然だろうが。









地元に戻った頃には、雪は激しさを増していた。

激しくなればなるほど、あたりは静寂に包まれた。


誰もいないカフェの店内は、まるで時間が止まったかのようだ。






新しいひと月が、音も無く動き始めた。

やることは山ほどある。

しかし時間もしっかり用意されている。


あと、必要なのは計画だ。

時間を有効に使おうと思う。