DAY 3

何度目のことか記憶にないが、

最後になることは間違いない。



今日が、僕の最後の休日出勤。

この静寂も、この夕焼けも、

なんだか愛おしく思えるから不思議だ。








「仕事観の整理にもなるし、話も興味深い。オススメだよ。」

そう言われて、転職先の人と喫茶店で会ったのは、

もう半年以上前のことだ。


仕事のこと、学生時代のこと、

聞かれることには何でも自信を持って答えた。

たったひとつの質問を除いては。





「将来の夢は何ですか？」





将来の夢は何か。

そう問われて、僕は頭が真っ白になってしまった。

いや、それについては元々真っ白だったのかもしれない。





「俺は俺のやりたいことをやる」

「俺は自分の道を信じる。進む」


そうやって生きてきたつもりが、はて。

僕は僕のやりたいことをやり、

僕の道を信じて進み、

そして？

そして、

僕は何処へ向かうのだったろうか？


様々思い描き、夢見た僕の将来とは、

いったい何だっただろうか？





その答えに窮した時、

自分がとても不安定な何かの上に成り立っていることを強く意識した。





その後も、もちろん今も、

僕は将来の夢をはっきりと答えられずにいる。


ただ、答えられないという事実を答えることができるようになった。

これは前進だ。





忙しい仕事の合間、

月に1回ほどのペースで転職先のレクチャーを受けた。

仕事とは何か。

人生とは何か。

考えるきっかけになった。









1ヵ月の休みを経て、僕は営業マンに舞い戻る。

その業界では有力な外資の生命保険会社だ。

試用期間が過ぎれば、完全なるフル・コミッション制。

食っていけるか。

食わねばならぬ。


自分がどこまでできるか、

自分にどれだけ甘えないか、

この先は、本当に自分との闘いだ。

不安もあれば、焦りも感じる。

しかし自信もある。








将来の夢。

なんだっただろう。



将来の夢をもう一度描きたい。

そのためにも、僕は転職して自分に挑戦したい。



そう告げて、

僕は転職を決めた。