七色の虹

3日間のGWの前後で、

就業するフロアが大きく変わった。



階数にして6階下へ、

およそ25m程度降下した計算になる。


2次元の25ｍというのは気に留めるような距離ではないが、

3次元、つまり上下方向の25ｍは非常に大きい。





「高所眺望マニア」のamericoma的には相当落胆してしまう、

今回のフロア移動。



これは別に僕だけのイベントではない。

フロアの部署まるごと、会社内がみんなであちこちのフロアへ引越しだ。


経費節減が合言葉のようになり、コスト削減が評価される今日この頃、

いったい全社の3次元方向への移動に何の意味があるのか、

いったいいくらかかっているのか、

僕は真正面から問いたい。



無論、就業階が降下したから僕は不満なのだ。

25ｍ上がる移動なのであれば、発起人を褒め称えていただろう。









ついでに窓からの景色も変わった。



今までは南西方向が見渡せる位置だった。

皇居、新宿、池袋、六本木。

好天に恵まれたなら、横浜や富士山。　実は所沢の西武ドームもバッチリ見えた。

眼下の東京駅を発着する山手線や新幹線は、もはや完全に鉄道模型。

その手のマニアに見せたら感激モノの光景だろう。





今度の視界は、南東から北東まで、東側ほぼ180度。


晴海、お台場、葛西、舞浜。

遠くに幕張や木更津。

失礼ながら、千葉方面には驚くほどランドマークが無い。。




ただし視界はいい。

実は丸の内側には高層ビルが多く、視界を遮られがちだ。

しかし京橋方向にそのようなビルは皆無で、

実に平坦な関東平野の一部を見下ろすことができる。









誕生日を迎えた先週の金曜日。

ふと窓の外に目をやると、七色の虹が出ていた。

絵に描いたような、美しい虹が出ていた。






ペンキを流したように濃くなったり、

背景に溶け込みそうなほど薄くなったり。

七色の虹は、刻一刻とその姿を変えながら、

不気味な鉛色の空に完全な半円となって浮いていた。





虹を見たのは、

いったい何年ぶりだろうか。


こんなに大きな虹に出会ったのは、

もしかしたら初めてじゃないだろうか。





夕陽に照らされる、

人間の作り出した建造物などより遥かに巨大な七色の虹は、

日が傾くと共にその姿を消した。







稀に見る自然の偉大なる芸術。

それが東京のど真ん中で起こっているという感動。



気がつけば、社内の連中のほとんどが、

仕事の手を止めて、窓際に集まっていた。


隣の席の女の子が言った。

「みんな、『忙しい忙しい』って言ってるけど、何とかなるんじゃん！」

本当だ。

僕は妙に納得してしまった。