再びの上野。充電。

1.　再びの上野

先日報告した上野の展覧会へ、

実はもう一度行ってきた。






作品保存の観点から、会期中に入れ替えが行われるのはよくある話だが、

今回も同様の入れ替えが行われた。

お盆休みど真ん中の美術展というのは嫌気がさすが、

作品のことを考えたら行かないわけにはいかない。





そういう絵を見てきた。






『風神雷神図屏風』


その名前だけで図柄をイメージできる人も多いはずだ。

美術の教科書に、日本史の教科書に、

日本美術の頂に燦然と輝くその絵は、

文字通り神々しいまでの存在感を放つ。



















　俵屋宗達 / 風神雷神図屏風 / 17世紀 / 国宝


















　尾形光琳 / 風神雷神図屏風 / 18世紀 / 重要文化財



17世紀に琳派の超人・俵屋宗達によって描かれたとされる、上の「風神雷神図屏風」、

18世紀に尾形光琳によって模写された、下の「風神雷神図屏風」。


好みについては分かれるところだと思うが、実に簡単な差異が見受けられる。


まずは、神の大きさ。

宗達が画面からはみ出すように2つの神を描いたのに対して、

光琳の作品で神は綺麗に画面に収まっている。


次に、目。

宗達の雷神は下界を見下ろすように描かれているが、

光琳の作品では風神と視線が交わるように描かれている。


最後に、雲。

宗達の作品に描かれた雲は淡く、

まるで画面の外から漂ってきたかのような印象を与える。

それに対して光琳の描く雲は黒く、

雷神の雲を四角く、風神の雲を三角にかたどって描いている。




もちろん、この差異が「光琳の模写の限界」を意味するわけではない。

宗達と光琳はそれぞれの画風を確立させたまさしく「巨匠」であり、

鮮やかな着彩や淡い陰影、人間らしい神の姿、

デザイン要素の高い雲の形など、

全ては光琳の入念な計算によるものであるはずだ。






難しい話は置いておいて、

この2つの作品を並べて鑑賞できる機会など、まずあり得ないだろう。

今度の日曜日で全ての会期を終えてしまうが、

絶対に行ったほうがいい。

まさに千載一遇のチャンスなのだ。

残念ながら、混雑ゆえ遠くから2点を同時に眺めることは難しいが、

その荘厳な雰囲気は、

どれだけの混雑の前にも霞むことが無い。







2.　充電


もう少しで夏休みが終わってしまう。




遠出をしたわけでもなく、

予定していた制作も進まなくて、

これといって何かを成し遂げられなかった夏休みではあったが、

大好きな上野に通いつめて、

すごく色々なことがクリアになった気がする。






上野の森。

芸術が自然に息づく森。

たくさんのホームレスらしき人が、

絶妙な距離感を持ってそれぞれ暮らしている。

カップル、美術愛好家、家族連れ、ジョギングの人。

色々な人が、

互いに関わりすぎることなくこの森で時を過ごす。

その、

虚無感と温かさをミックスしたような、

芸術の厳しさと優しさを内包したような上野の森。







仕事の話、プライベートの話、

色々な話をしながら、上野の森で朝を迎えた。


仕事の目的ってなんだろう。

絵を描く目的はなんだろう。

5年後の自分はどうしているのだろう。

5年前の自分は何を思っていただろう。


酒を飲んでいたわけでもないのに、

自分の気持ちを洗いざらい話してしまった。

言葉足らずなその話に、

理解を示してくれる人がいるということに、

正直ちょっと驚いてしまった。






それはまるで、

学生時代のアトリエで迎える朝のようだった。

蝉が鳴き、鳥が羽ばたき、空が染まる。
































再びの上野で、心の充電。

休みが終わる。

慌しい日々が戻ってくる。