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LESS IS MORE 少なければ少ないほど効果は大きい。


影を描くことで光は描かれるし、

墨の濃淡がそこに横たわる湿った空気を浮かび上がらせる。







午前中、最後の「フライング出社」を終え、上野へ向かった。

生ぬるい風が時折り強く吹き、あまり心地のいい天気ではなかったが、

歩いて向かうことにした。




近い。

以前神田から古巣の東京八重洲のグラントウキョウまで歩いたら15分ほど。

思っていた以上に近くてびっくりしたが、今回は1駅ではなく3駅。

それでも30分くらいで着いただろうか。

古びた神田の路地を抜けて神田川を渡ると、そこは突然の電気店街。

そのすぐ先の御徒町からはアメ横の商店街が続く。



秋葉原の街頭には本当にメイドさんがいて、

こちらがうろたえるようなテンションでビラか何かを配っていた。

手当たり次第配るように見えて人を選んでいるのか、僕のことは見てみぬふりだ。笑





秋葉原の駅前こそ再開発で綺麗になってはいるものの、

裏側には昭和の気配が色濃く残っていた。







IMG_0271.jpg



























55538b88.jpg



























派手で力強い、オモテの光。

退廃的で、しかし魅力あるウラの影。


変わりゆく風景と変わらないそれとを眺めながら向かったのは、国立博物館。

1月にブログにも書いた、安土桃山の絵師・長谷川等伯の回顧展を観に行った。



IMG_0277.jpg


























上野の森はおおらかだ。

いつだって温かく僕を迎えてくれる。

絵のことだけ考えていればよかった頃を思い出す。





ある程度予想していたが、

長谷川等伯の展覧会は初期の仏画が非常に多い。

中世以前の西欧画家が聖書の様々なシーンを表現するのが常であったように、

当時の日本でもまた仏画はスタンダードな「様式」の絵。

描き方も描く意味もおおよそ決められていて、

そこに反映された絵師たちの挑戦やこだわりによって仏画は進化してきた。



個人的には仏画はあまり興味の対象ではなく、

筆を手にした人間の純粋な欲望としての絵画に惹かれる。


宗教や行事に縛られたものではなく、

紋様のように「デザイン」として存在するものでもなく、

「自然」を描いたもの、「現実」を切り取り表現したようなもの。

そこには描いた人の全てが表されているようで、

そんな作品と時空を越えて対峙できる展覧会というのは素晴らしいものなのだ。





様々な流派で学んだ長谷川等伯は、やがて実力を認められ、

当時隆盛を極めた狩野永徳と肩を並べる巨匠となる。

等伯はいかに自然をとらえ、いかに描こうとしたのか、

没後400年経った今、それを正確に知る術はない。




ただ晩年の彼が着彩画を捨てて水墨画を描き続けたということは、

彼の思いを知る手がかりになるのかもしれない。



例えば、

既にその人気を確固たるものとしていた70歳の葛飾北斎は、

70歳を過ぎる以前の作品を駄作だと言い放ち、

その後20年間黙々と水墨を中心とした肉筆画を描き続けた。


例えば、

16歳でラファエロの模写を完璧にこなしたピカソは、

「子供のように絵を描く方が難しい」と言って、

子供の落書きのような絵を懸命に描き続けた。








そこに何があるからか。


僕の解釈では、それが「LESS IS MORE」。

少なければ少ないほど、効果は大きい。

言葉もそう、作画の手数もそう。

極めれば極めるほど、

尖らせれば尖らせるほど、その先はシンプルになっていくものと思う。




長谷川等伯は、着彩を捨てて水墨を選んだ。


影を描くことで光は描かれるし、

墨の濃淡がそこに横たわる湿った空気を浮かび上がらせる。



長谷川等伯は、着彩を捨てて水墨を選んだ。

霧の向こうに、何を見ただろう。






3cc9e13a.jpg














 「松林図屏風(右隻)」












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難しい
僕の知っている言葉だと『simple is best』って事でしょうか?
日本は簡素な美意識が優れていると思っています。

でも…
どうしても着飾ってしまうんですけれどね~(笑)
よっし~ 2010/02/27(Sat)09:11:11 編集
無題
>よっし~さん
まさにそんな感じですね。
簡素&質素な美意識って素晴らしいと思います。

「でも」の後の部分も思い切り同感です。笑
americoma 2010/02/27(Sat)21:41:22 編集
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自分自身興味津々。


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