三寒四温

気が利くのか、利かないのか。

モト・ギャルソンで今も頑張る後輩君が、

このブログを例の「BOSS」に見せたらしい。

BOSSは途中でボロボロ泣いてしまったらしい。





BOSSの最終出社日となった先月20日。

僕は有休を取って彼に会いに調布へ行った。

途中の花屋で、少々大袈裟な花束を買った。



色々話はしたが、未だ実感は沸かない。



「お客と走ってナンボ。お客と遊んでナンボだよ、ハーレー屋ってのはさ。」


ため息交じりに彼は言った。

久しぶりに聞いた、いつものフレーズだった。


相変わらず丸っこい拳に、

相変わらずゴツイ指輪がギラギラしていた。

視線を落としたBOSSの表情は、なんだか物悲しそうだ。





自分の大好きなハーレーで、

自分の愛するビューエルで、

話を聞き、話をし、共に走り、ともにいじる。時にはお酒も。


それは自分にとっても大きな喜びであるはずなのに、

なぜ、皆それができないのだろう。




最初の頃は、お客さんが怖くてしかたなかった。

売らなきゃならない。クレームがあっちゃまずい。

商談するたびに汗だくだったあの僕が、

素直に自分を売り物にできたのは、何がきっかけだったんだろう。




本当は国産バイクの方が好きな人、

本当はクルマにしか興味のない人、

成り行きでハーレー屋に勤めている人、

彼らがハーレー屋を楽しめないのは、もしかしたら当然かもしれない。


でも、そんな人間を夢中にさせることこそ会社の魅力であるはずで、

ハーレー・ダビッドソンは十二分に魅力のあるアイテムだ。

なのに、現実には、

彼らはおろか、

むしろハーレーとそのお客さんを愛してる人ほど辞めているように思う。

何かがおかしいと思う。








BOSSが辞めると聞いてから、

自分からハーレーを買ってくれた沢山のお客さんのことを、

最近よく思い出す。

なんとなく行き場がなくなっていやしないか。

何だか申し訳ないことをしたんじゃないか。

最近よく思う。










先週、後輩君とBOSSの3人で吉祥寺に集まり、酒を交わした。

僕の好きな吉祥寺のBAR “ Funky ”。

値段は高いが、狭い店内は落ち着きがあり、雰囲気はいい。

寂しさと楽しさとがまざった不思議な気持ちよさは、

久しぶりに飲んだジャック・ダニエルのおかげかもしれない。



モト・ギャルソンを社長と共に立ち上げる前のBOSSは、

職人とも言えるような自動車の板金塗装屋だ。

そういう経験とコネ、モト・ギャルソンでのそれとを合わせて、

何かしらの店をやろうかと思っているようだ。



一体いつ、どこでそういうことになるのかはわからない。

ただ、

温かくて、いつも人が集まる、そういう場所になるのは間違いないだろう。








三寒四温。

金曜日のグラントウキョウには雪が舞った。

超高層のビル風で、雪は猛烈なスピードで空を乱舞していた。



コートが暑苦しい朝と、

指先の凍える夜とを繰り返し、

もうすぐ春がやってくる。




先日、初めてS1のタンデムを経験した彼女は、

免許を取ってバイクに乗りたいと言い始めた。


走るにも、いい季節になってきた。




吉祥寺で飲みながら、3人で伊豆へ行こうと約束した。

その前に、

感覚を取り戻すべく、朝練をやろう。

そしてさらにその前に、

車検を継続しなければ。