秋のビッグツーリング・帰還

風に吹かれ、雨に打たれる。

そうなるとわかっていたのなら、

一体誰が好き好んでオートバイを引っ張り出すだろうか。



風に吹かれ、雨に打たれる。

悪天候下での走行の辛さは、車でのドライブの比ではない。

しかし、

絶好の天候下での感激も、これまた車の比にならないものがある。

感動や快感の度合いは人それぞれではあるものの、

その振れ幅は広ければ広いほど豊かでいられると思うのは気のせいだろうか。

そういった意味で考えれば、

バイクライフというのは間違いなく人を豊かにするだろう。





オートバイの魅力、ツーリングの魅力の原点というものは、

まさにここにあるという気がするし、

台風接近による雨や気温低下と、

雲ひとつ無い秋晴れや色鮮やかな紅葉という対極を味わった今回のツーリングは、

まさにバイクライフを象徴するかのようなものだった。







だいたいなぜ突然台風になったのか、

出かける前から雨というのは相当にテンションが下がる。

幸いレインウェアを買い換えたばかりだったからまだいいが、

朝日を浴びながら集合場所に向かう方がいいに決まってる。


時折り強くなる雨脚の中、

関越道高坂SAに集まったのはおよそ100台のハーレー。


途中赤木高原SAでの小休憩をはさみながら、ほぼ一気に沼田ICへ。

一向に収まらない雨と、時折り吹く風。

手をグーにしただけでグローブからは水が滴り落ち、

歩けばブーツの中からチャプチャプと音がする。


電車やクルマでの外出も億劫になるほどの天気の中、

ツーリングにどんな快感を見出せようか。

ヘルメットの中で歌うくらいが精一杯だった。




沼田ICから国道120号、通称ロマンチック街道を進む。

金精峠へ向けて次第に標高を高め、一気に日光へ下るルートだ。

吹割の滝に、丸沼、菅沼。

日光白根山の北側をグルリと周る国道沿いには絶景スポットも少なくないが、

この日の視界はほぼ真っ白。

手が硬直して動かすのが大変なほどの寒さだった。

金精峠は標高2,000mを超える、関東有数の高所峠だ。

この手前で早めの昼食をとり、温かいそばで体を温める。



冷たいグローブに再び手を突っ込むのにはかなり勇気がいったが、

金精峠を越えた僕らは戦場ヶ原から中禅寺湖、そしていろは坂を下った。


天候不良で予定を変更したから、鬼怒川のホテルに着いたのは午後2時半くらい。

温泉につかって体を温め、フライング気味にお客さんと乾杯、笑。




夜の宴会でお客さんに退社の挨拶をさせてもらった。

うまく表現できないが、

「また一緒に走れるに決まってるさ～♪」

と僕自身は全く寂しくない、笑。




鬼怒川温泉は川の両岸にホテルが立ち並ぶが、総じてどれも古い。

泊まったホテルにも古さを感じたが、

なんと！！！

部屋から対岸のホテルの風呂場が見えるじゃないか！

結構遠く、しかも角度的に（笑）ベストとは言えない。

裸の人間だけなら男女の区別も難しいほど小さく見えるが、

隣の風呂場にはいかにもオッサンな仕草の人たちが大勢いるから、

僕らが釘付けになっているのは女湯に間違いない、笑！

人がいるのは確かだが、女性なのもほぼ間違いないが、

お姉さんなのかオバチャンなのか、、、それは知らない方がいいか。

「オペラグラス持ってくれば良かったぁ」

そう嘆くお客さんがいたけれど、

ツーリングにオペラグラスを持ってくるという機転の利き方は尋常ではないぞ、笑。



「明日は晴れる」

みんな口々にそう言っていたが、

天気予報を見ていないから本音ではにわかに信じがたかった、

朝、部屋の障子を開けてみるまではね♪




強力な日差しと色濃い青空。

うっすらと黄色く、赤く染まる木々。

これこそツーリングだ♪こういうのを待っていた♪



前日予定変更でホテルへ直行した僕らは帰路も変更。

鬼怒川、国道121号から龍王峡を抜けて

霧降高原・大笹牧場を目指した。


路面はまだ若干ウェット。

落ち葉も随分見受けられたが、乾いた路面の爽快感は格別だ。

「最後だから」

と後輩におごってもらったソフトクリームを食べながら、

昨日の分まで日を浴びた。





























まだピークでは無いだろうが、

徐々に色づき始めた山々は実に美しい。




「最後だから」

大笹牧場からチームの先頭に立って走った。




肩を寄せ合うように並ぶ集落。

深い谷と、底を流れる川。

手付かずの大自然とは言えなくとも、

近現代日本の原風景とも言えるような光景の数々。




霧降高原から日光市内へ降りた僕らを待っていたのはお決まりの渋滞だ。

それでも多少流れている気がするのは、

まだ時間が早いからか、それとも昨日の台風のおかげだろうか。


本来ならバンバンすり抜けしたいところだが、事故でもあってら困る。

ジワリジワリと動く車列にしたがって徐行していたら、エンジンが止まった。

XB9Xが久々にやってくれた、オーバーヒートだ。。。

あちこち改造しているからか、どうも熱を持ちやすい。

前回のオイル交換から2ヶ月、1,500kmほどの走行というのは、

変えてもいいが、まだ変えなくてもいい頃合いだ。

必殺レーシングモジュールが効いたか、どうもノロノロ運転は苦手なようだ。


先導している最中、

しかも左折ポイント近くということで焦ったが、

しかしまぁ、レーシングマシンのようで愛らしいと思えばなかなかCOOLでしょう、笑。



渋滞中、先頭の僕はバイクを降りて写真を撮ったりするわけだが、、、



みんなが無表情なのは仕方ないのか、笑。

ヘルメットの中で最大限の笑顔を作ってくれていると信じつつ、今日もパチリ。


道路端へバイクを押した僕は、

別のスタッフに先導を急遽頼み、そこで一服。

オーバーヒートは機械トラブルとは異質だ。

冷めれば解決するし、冷めなければ冷めるのを待つしかない。

もっともその原因をもっとハッキリさせねばならないが。


5分くらいだろうか、

安定感は無いが何とか息を吹き返したビューエルで集団を追う。

空冷エンジンを冷やす最良の方法は、

そう、かっ飛ばすコト♪

「先に言ってていいよ」

とは言ったが、きっとどこかで休憩を入れて待っているに違いない。

しかし集団はどこにもおらず、

しばらくして前方を至って普通に走っていた、笑。



国道122号を南下して、

公害で有名になった足尾の町を抜け、草木湖へ。

立ち止まると暑いくらいの好天の中、

昼食をとった僕らは下道を下り続け、伊勢崎ICから高速で帰還した。






人にバイクを売る。

その人とバイクを楽しむ。

その人から感謝される。

ツーリングに行く。

お客さんと酒を飲む。

お客さんが喜んでくれる。



好きでなければ勤まらないとはいえ、なんと幸せな仕事だったんだろう。

本当に幸せな月日を送ってきたのだと、改めて実感した。

こんな仕事を自ら辞めるとは、なかなか凄いことだ。





さてさて、次なる職場もそう思えますように。

全ては自分次第、ですよね♪