夜 風

放課後ダッシュで帰って、

玄関でランドセルを放り投げて家を飛び出す。



そんな経験、きっと誰にもあることだろう。


でもそんな経験、

きっと最近ご無沙汰なんじゃないかな、誰もが。






帰宅して、

スーツを脱ぎ捨てて、破れたジーンズを履く。

カバンを放り投げて、ヘルメットを手に取る。


夜風に誘われて、ビューエルのご機嫌も上々だ。








先週が仕事のピークだった。

月刊誌と週刊誌の校了、つまり原稿アップのタイミングが重なり、

さらに他のイベントや書類作成も待ったなしの状況。


八方塞がりの状況で経験値の浅い僕に出来るのは、

ただ長い時間会社に留まることだった。





それが頑張り屋さんではない。

世間はそんなに甘くない。



本当に頑張る奴は、

本当に出来る奴は、

幾多の仕事をパズルのように時間枠に収めてしまうものだ。

まだまだ僕は甘いと、

つくづく考えさせられる1ヵ月だった。








業務量の比較的少ない今週の僕。

今日は7時前に会社を出た。






組織が、人が、目まぐるしく動く春。


良くしてくれた課長とも、

信頼できた部長ともお別れだ。

別れと出会いを繰り返して、

さてこの先、

僕はどう成長できるだろうか。

僕はどれだけ成長できるだろう。






久しぶりの早帰りで、

半ば興奮気味にビューエルを走らせた僕。



夜のテラスで飲む久しぶりのカフェラテ。



嬉しく、そして寂しく、

そしてそのどちらでもない、

不思議な感覚が気持ちいい。




暖かく、そして冷たく、

そしてそのどちらでもない、

不思議な夜風に包まれる。