華麗なる激情

どういうわけか知らないが、

モトリー・クルーの1981年のデビューアルバムには、

「華麗なる激情」という邦題が冠されている。

オリジナル・タイトル「TOO FAST FOR LOVE」とは大きく異なるそのコピーは、

しかし楽曲にも彼らにも相応しく感じられるし、

「華麗なる激情」という言葉そのものに不思議な魅力がある。








実は最近仕事も、それ以外の時間も本当に忙しくてつらい。

時間を奪われるというよりも、心にストレスを与え続けられているような、

なんとなく落ち着かない、そういう、気持ちの忙しさだ。







山を登りきれば、その視界には新しい頂が見えている。

その頂を目指せば、かつて制覇した山が如何に小さなものであったかを知る。

この仕事に限るまい、

仕事の報酬は仕事であり、

応え続ける限り、つねに山は存在し続ける。



ある山の頂を極めた見返りに、その先の地図を渡される。

先へ進むことが、新しい山を極めることが、

それが会社組織の利益や成果になり得るからだ。

登れない奴は必要とされないし、

どんどん登る奴は重宝される。


時として、そこに登る者の意思は尊重されない。

大局を睨んで全体の目的のために犠牲を払うこともあるだろう。

まるで「プライベート・ライアン」のような話だ。













いよいよ冷え込む季節になった。

寒い。

タリーズでオーダーするいつものカフェ・ラテも、

そろそろホットが美味しい頃合い。



いまいち一発始動しない我がビューエルだが、

冬場の心地よさは相変わらず。

早起きして熱海の足湯でも目指したいところだが、

オイルの漏れるフロントフォークと、

振動で割れたナンバーステーを早く直さねば。

燃費の悪さも相変わらず。

FCRのジェット交換も近い。








会社の中で力を発揮すること、

つまり会社の利益獲得に貢献すること。

それは会社組織に生きる人間として当たり前のことである。

評価されて、新しい仕事を任されて、

それは次の頂を目指す原動力となるわけだ。



会社の面接などで考えなければならないのは、

自分が採用・登用されることで、いかに会社にメリットを生むか。

これがなければ、その人は不要な人材なわけだ。


しかし本当に大切なのは、

その会社で働くことが、いったいどれだけ自分に意味があるのか、であるはず。

それが貯金などの経済的目的でも、

人間的成長という大それた道徳的目的でも、

何かを得、何かしらの夢を叶えられなければ、

そこで働く意味など、本当は無いのだ。








「夢はなんですか？」

それを聞かれたことよりも、

それにうまく答えられなかった自分に驚いたのは言うまでもない。


「将来はサッカー選手になるんだ」

「大人になったらサメの学者になって世界のサメを守るんだ」

「絵を描き続けて、アーティストとして死んでいくんだ」

全て、一度は描いた僕の夢だ。

夢を描かなくなったのはいつのことだろうか。




「これが僕の夢です。そのために今こんなことをいています。」

そう答えられる人が、どれだけいるか。

そう答えられることが、どれほど大切か。





あまりにも忙しく、あまりにも心落ち着かない毎日。


周囲の音を遮断して、

完全な個となり、自分と向き合う時間が欲しい。

寺でもなければそんな環境はなかなか手にしがたいが、

静かなピアノジャズを聴きながら座っているだけでもいい。

大まかでいいから、

今までのこと、これからのこと、少し真剣に考えたい。





































「華麗なる激情」。


本当に激しい感情は、

実は、とても静かに、穏やかに燃えるのではないだろうか。

それが強い感情なのであれば、

確たる思いなのであれば、

声高に主張する必要などないのだから。