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昼過ぎ、神保町から歩いた。


祝日の日中ではあったが、

混雑というほどのことはなく、

場所柄飾らない中年や明治大学の学生が目立った。


昼間にスーツでウロウロする僕なんて、

よっぽど浮いていただろう。




相変わらず本はあまり読まないが、本屋は結構好きだ。

色んな情報が溢れかえっていて、そう、それは正に知識との出会い。

小説や美術書のひとつひとつに、

僕の可能性を広げるという可能性が広がっている。





神保町の古書店街には小さな思い出がある。

神保町駅近くの路地裏の店。

音楽雑誌を専門に取り扱うその店に、中学2年くらいだったか、

僕は貯めた小遣いを持って乗り込み、

モトリー・クルーが載ったロック雑誌を買い込んだ。

80年代の「BURRN!」や「MUSIC LIFE」、「IN ROCK」など、

中古雑誌を買い占めるには僕の小遣いでも十分だったが、

「何とかなるだろう」

と気合で雑誌を詰め込んだコンバースのドラムバッグは、

中学生1人分くらいあるような重量になっていた。


衝撃的な出会いを果たしたモトリー・クルーの過去に触れられる、

まだ見ぬカッコイイ写真に出会える、

それだけで頑張って担いで帰ったが、

帰宅した頃にはバッグのベルトはちぎれかけていた。

なかなか大胆な中学生だったと思うが、

あれを運んでいる姿は何とも異様だっただろう。





前日より暖かい午後の陽を浴びて、御茶ノ水へ向かう。



ロックバンドに魅せられた中学生は、やがて高校生になり、

生まれて初めて楽器を手にする。

明治大学の目の前の楽器店、「Big Boss」。

イシバシや下倉より何となく硬派なイメージがあったその店で、

憧れのロックスターと同じ色のサンダーバードを見つけた。

もちろん本家ギブソンのものではなかったが、

僕にはその1本が一際輝いて見えた。



ギターを弾くなんて、特別に繊細な奴のすることだと思っていた。

音感なんて全く無かったし、習い事も得意ではない。

そんな自分が楽器屋でベースを買ってしまった。


ロックの仲間入りをしたことと、

弾けるようにならないとカッコ悪いという妙なプレッシャーとで、

初めて担いだ楽器は重くも軽くも感じられたものだ。



丸の内線の中で、僕はもう得意げだった。

嬉しくて、笑いが止まらなかった。

それ以来、毎日ひたすら弾いていたのは言うまでもない。



何故か知らないがこの辺は楽器屋が集中している。

今でこそ新宿や渋谷に巨大な楽器店が存在するが、

それ以前から、ここは楽器屋が軒を連ねる激戦区だった。

荷物を手にしていては入れないような狭い店内、

店先でダンボールに無造作に入れて売られるギタースタンド。

この辺りの光景は、

あの当時と何も変わっていない。





場違いなほど突然現れる寿司屋のせいで、

JR御茶ノ水駅改札の周辺は妙に生臭い。

生臭い魚の匂いと、シャリに起因すると思われる酸っぱい匂い。

改札脇の道路はこの匂いが充満している。


いい匂いではないが、よく覚えている匂いではある。





小学校4年から卒業まで、

週に何回かこの近くの塾に通っていた。

そう、一応勉強してたのだ、この頃は。




1人で丸の内線に乗り、

聖橋を渡って、友達とマクドナルドに寄り、

ハンバーガーセットを持って教室に駆け込んだりしていたっけ。

ライトアップされたニコライ堂は、

幼心に、しかし建築美を魅せつけていたものだ。


酔っ払いにからまれたり、

ちょっとヤバそうな兄ちゃんに睨まれたり、

ビクビクしながら生臭い、酸っぱい通りを足早に帰った。



帰りにいつも通ったのが、お茶の水橋から眺める聖橋。

どうやら昔から夜景が好きだったようだ。






なんだかんだ、

塾に通っていた頃から20年も経った。

ベースを担いで帰ったあの日からだって、

もう10年以上経過している。


楽器屋に行った後必ず立ち寄ったマクドナルドがあるのはわかるが、

まさか酸っぱい匂いまで当時のままだとは。

懐かしさを少し通り過ぎて、

リアルに色々思い出してしまった。





ノスタルジア -Nostalgia- 。

この言葉、ウィキペディアによれば、

「nostos / 帰郷」と「algos / 心の痛み」という2つのギリシャ語による造語だそうだ。

それは、

「故郷へ戻りたいと願うが、二度と目にすることが叶わないかも知れないという恐れを伴う病人の心の痛み」

として医学的見地から取り扱われていたとのこと。

今でもネガティヴな懐古主義と受け取られてしまうこともあるらしい。



もちろん僕は、

小学生に戻るつもりも無ければ、

高校生をやり直したいと思っているわけでもないのだが。



ただ単に懐かしいのだ。



そんな日々の積み重ねで僕はここにいて、

そんな日々を経て歩いていると思うと、

何やら足取りは軽く、どこか心地いいのだ。


僕が何処へ向かうとしても。














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ノスヒロ
僕は晴海ふ頭の高校に通っていたので、
その辺も帰りにブラブラしていました。
楽器も買いましたね~(笑)
押入れの奥で眠っています。

僕にとってはあまり良い思いでではありません。
懐かしく思い出す事もありません。
消し去りたい記憶なのかな?
よっし~ 2009/11/24(Tue)09:17:26 編集
無題
>よっし~さん
この辺はのんびりしていていいですね、空気が。笑
消し去りたい記憶ですか・・
一度足を運んでみては?
思い出も変わるかも知れませんよ!
americoma 2009/11/29(Sun)18:27:13 編集
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人 魂 で
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アメリカと日本、
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こよなく愛し、
その矛盾する感覚に
自分自身興味津々。


1996 BUELL S1
僕の頼もしい愛車。

葛飾北斎と
MOTLEY CRUEを
崇拝しております。

休日は近所のタリーズで
絵を描いたり、
雑誌読んだり、
人間観察したり、
考え事したり、
何もしなかったり。
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